あやつり糸の世界[前編]

未来予知に関する研究を行う組織、サイバー未来研究所にヴァインラウプ次官が視察に訪れる。出迎えたのは所長のジスキンス、技術局長のフォルマ―、保安主任のラウゼ。

フォルマ―は憔悴しており、鏡を次官に向け「ここに映っているのはただの写像に過ぎない」と断じてあざ笑う。
次官は気を悪くし、フォルマーはラウゼに付れ出される形で退席。

別室で、フォルマ―はラウゼに「知れば世界が終わる、自分だけが知っている秘密がある」と打ち明け、その直後にコンピュータ室で高圧電流を浴び死亡する。

パーティ。
突然死したフォルマ―の後釜として、ジスキンスはフォルマ―と旧知であるフレッド・シュティラーに誘いをかける。
プロジェクトに興味があったシュティラーは多額の報酬を条件に仕事を引き受ける。
シュティラーは金髪の事務スタッフ、グロリアと出会い、プロジェクトについて質問される。
『シミュラクロン』という、一万人のバーチャルな人格が生きる仮想世界を内包したコンピュータを用いた研究らしい。
シュティラーの前に不安げな様子のラウゼが現れる。ラウゼはフォルマ―の死の直前の様子について、酷く取り乱していた事、死の直前に狂気じみた告白をしていたことについてシュティラーに打ち明けるが、告白の内容について話そうとしたところ、一瞬目を離した隙に消えてしまう。
後日、警察に事情を話すも当日ラウゼの姿を見た物は他に無く取り合ってもらえない。

局長室。フォルマ―の荷物を受け取りに来たフォルマ―の娘エヴァとシュティラーが出くわす。
ラウゼは彼女の叔父なのだが、彼女は「自分の叔父はヤーコプ・マイクスナという名で既に故人であり、ラウゼなど知らない」と言う。
シュティラーはフォルマ―が遺したメモ「アキレスと亀」のイラストを発見するが、目を離した間にイラストはかき消え白紙になっていた。

茶店
シュティラーは友人で研究所付きの心理学者であるフランツにイラストについて相談し、ゼノンのパラドックスについて知る。
フランツはフォルマ―と死の3日前に面会しており、様子が変だったと語る。何か重大な秘密を握っていたらしい。
フォルマ―はシミュラクロンのバーチャル人格を「我が子たち」と呼んでいたらしく、プログラムに長く触れるうち愛着が沸いたのだろうとフランツは推察する。
シュティラーはフランツにラウゼの件を相談するが、フランツは要領を得ない様子。
フランツ曰く、ラウゼなどという人物は知らないし、研究所の保安主任は過去五年間エーデルケルンという男が務めているそう。

「ラウゼは失踪したどころか、存在の痕跡すらも消されている?」取り乱して走り去るシュティラーの頭上に、クレーンから落ちたコンクリートブロックが降り注ぐ。
間一髪で回避するも、女性が一人巻き込まれて死ぬ。全く無関心な様子で、女性の死体からライターを拾い上げタバコに火をつけるシュティラー。

連合鉄鋼株式会社首脳部のハルトマンからの招きに応じるジスキンス。グロリアは所長秘書だったらしい。
会談は秘密裏に行われたが、カメラを携えた記者が遠くからそれを監視している。

同じ記者にシャッターを切られるシュティラー。
男は日刊新聞のルップと言うらしく、研究所と企業の癒着を疑っている。
シュティラーは「人類すべてのための研究だ」と言ってかわす。

ラウゼの社員ファイルを検索するシュティラー。データは一つも出て来ない。
代わりにエーデルケルンのファイルを調査するも、本人が通りかかり気まずい空気になる。
全く覚えが無いが、シュティラーはエーデルケルンの家族とも懇意の仲であるらしい。

シュティラーの秘書マヤが病気で倒れ、ジスキンスの指示でグロリアが新しい秘書になる。
ラウゼの件について捜査状況を警察に問いただすも、捜査どころかそもそもラウゼと言う人物は知らないと告げられる。

マヤを見舞うシュティラー。原因不明の病らしい。別れ際に、シュティラーに愛を告げるマヤ。

ハルトマン、ジスキンス、シュティラーの会談。
ハルトマンは政府付きの鉄鋼業社長で、20年先の国の事業を見据えた国の大規模投資計画"展望2000"鉄鋼部門の委員長。
効果的見積りを得るためにダントツの処理性能を誇るシミュラクロンの予測を利用したいらしい。

特定の企業に加担することはできないと協力を断るシュティラー。
彼の理想主義はすぐカタが付くとハルトマンに嘯くジスキンス。

シミュラクロンのモニタールーム。シュティラーは「中と直接接触したい」と部下のフリッツに依頼する。
頭部から配線が伸びた女性の影が映り込むが良く見えない。彼女は「富豪の娘と同化している」らしい。

研究所に訪れた刑事に質問を受けるシュティラー。フォルマ―の不審死について、動機があることを指摘され取り調べを受けるが、シュティラーは別荘に居りアリバイがあった。
ラウゼ失踪の件で訪れた刑事と同一人物なのだが、相手はシュティラーと初対面のような反応を見せる。

コンピュータルーム。
トラック運転手に乗り移る形で、シミュラクロン内部に入るシュティラー。
現実と全く同じながら、どこか違和感のある作り物の世界をぼんやりと眺める。
まもなくして「帰還せよ」の緊急メッセージを受け取る。

医務室。
謎の爆発でシミュラクロンのシステムが一部ダウンし、シュティラーも危うく死ぬところだったらしい。
何者かによる破壊工作を主張するシュティラーとフリッツ。
ありえないと否定するエーデルケルン。
故障か何かだろうと楽艦的なジスキンス。
爆発原因の調査はエーデルケルンが受け持つことになり、シミュラクロンは2・3日修理へと出される。

エヴァとシュティラーの会食。
シュティラーはフォルマ―の死の真相を突き止める事を約束し、二人はドライブに出る。
途中で、それまで何度か発症していためまいにが悪化しハンドル操作を誤りかける。その次の瞬間、道路の街燈が一瞬全て消え、暗闇が訪れる。
混乱するシュティラー。

自身がバーチャルを認識しているシミュラクロン内部の連絡員アインシュタインから報告が届く。バーチャル世界にて自殺未遂者が現れたらしい。
システム保護のため彼の存在を抹消するとシュティラーに報告する部下。
自殺未遂者の名前はクリストファー・ノーバディ。苗字と名前の頭文字を取ると「ゼノン」になる事に気付き、何かが繋がっていると気付くシュティラー。

シュティラーはノーバディが何かを知っていると踏んで会談を申し出るが、既に遅くプログラムは消去された後であった。
シュティラーは代わりにアインシュタインと会談するためにシミュラクロンに入る。

シミュラクロン内部。上位存在との対面は珍しいと語るアインシュタイン。「ここに居るのは投影に過ぎない」と説明するシュティラー。
ノーバディは世界の真実を知ってしまって混乱していたらしい。

シミュラクロンから出る直前、ラウゼによく似た者を見たシュティラー。
データベースを検索し、フォルマ―がラウゼのデータをシミュラクロンに入力していたことが判明する。

シュティラーの前に謎の男が現れ、「全て忘れろ」と警告してすぐに人ごみに消える。
フランツに今までの全てを打ち明け相談するシュティラー。
フランツはシミュラクロンが原因のストレスと分析する。小さな世界の神としての重責に耐えられなくなったのだろうと。
フランツは休暇を進めるが、一企業のシミュラクロン利用を許せないシュティラーは職場を離れるわけにはいかないと突っぱねる。


フランツの勧めでグロリアと遊びに出るシュティラー。
酔った勢いで「フォルマ―のようにジスキンスに抵抗する、シミュラクロンは使わせない」と心のうちをぶちまける。

所長室。シミュラクロンについて社会の不安を煽る報道を止めるために、シュティラーによるマスコミ向けの説明会が実施される。取材陣の中にはルップの姿も。
シミュラクロンはコンピュータ上に作られたシミュレーションモデル、人口約1万のミニ世界であり、未来をシミュレートすることもできるのである。
ジスキンスはあくまで公共の利益を強調するが、ルップはハルトマンとの癒着関係に鋭く切り込んでいく。

エヴァとシュティラーの会食。「フランツに相談して楽になった、全てストレスのせいだ」とにこやかに語るも、エヴァの反応は薄い。
エヴァを部屋に送ったシュティラーであったが、その直後、ラウゼと同じようにエヴァまで姿を消してしまう。
ラウゼと同じようにエヴァの事も皆忘れてしまうのかとバーで飲んだくれるシュティラー。

翌日。シュティラーの知人であるマーク・ホルムが研究所に新規採用され、シュティラーの下に付く。
シュティラーはホルムの前所属が連合鉄鋼株式会の姉妹会社であり、ハルトマンから送られてきたスパイと即座に見抜く。

エヴァと電話するシュティラー。「昨晩はソファーで寝ていた。見落としていたのでは」と説明するエヴァ
電話を盗み聞きするグロリア。

社食でサボるシュティラーにフリッツが話しかける「新人のマークには困ったもんだ。中に入ってアインシュタインに話を聞いてくる」と。
やがて戻って来たフリッツの様子がおかしい。シュティラーは話しぶりからフリッツの中に入っているのがアインシュタインと見抜く。
シュティラーに締め上げられ、「俺は人間になってやる。これは第一歩だ、次の二歩目で現実世界だ」と噛み合わない話をするアインシュタイン
アインシュタイン曰く、シュティラーの世界もまた「上の存在」に作られたシミュレーションに過ぎず、フォルマ―はそれに気づいたため殺されたらしい。
「あんたはどうする」と勝ち誇ったように笑うアインシュタイン。激しくなる耳鳴りとめまいに、シュティラーは気を失う。

[前編スタッフロール]