ABCオブデス -「Apocalypse」

ABCオブデスは26人の監督がそれぞれ「死」をテーマに作品撮った26本のオムニバス作品で……ってそんな話はどうでもいい。私が語りたいのは1本目の「Apocalypse」について。

 

 

<あらすじ>

ベッドに寝たきりの中年男性に、刃物を持った妻が突如襲い掛かる!

ぎこちない手際ながらも首を切りつけ、トドメとばかりにフライパンで温めていた料理をぶっかけるも、夫はなかなか死ななない。

やがて疲れた様子の妻はベッドサイドに座り、事の顛末を話す。

「こんなはずじゃなかった。去年から盛っていた毒でゆっくり死なせるはずだった。予定通りなら、私の仕業とバレず上手くいっていたのに。でも、ニュースを聞いて時間切れと知った。時間が無かった……」

まるで溜息のような断末魔を吐き出し俯いた夫に、寄り添いもたれかかる妻。窓の外からはパニックや暴動を思わせる不穏な音が鳴り響いている……。

画面が赤く暗転して、タイトルバック「Apocalypse - アポカリプス」。

 

 

<感想>

つまり夫の毒殺を計画していた妻が、突然の世界の終わりを告げられ「最後にやり残した仕事」「死ぬ前に思い残した事」として夫に襲い掛かかる話である。

妻はそのやるせない思いを吐露するが、夫は非難するでもなく静かに逝き、最後は互いを許すかのように寄り添いながら終末を迎える……というちょっと切ないエンドなのだが、ネットを閲覧すると「夫はゾンビ?」だの「寝たきりの夫が可哀そうなので愛故に、終末が来る前に殺そうとした?」だのとんでもない感想ばかりなので筆を取ることにした。

「愛故に」という後者の意見は議論の余地があるとは思う。元々毒殺を計画した経緯は怨恨なのか、安楽死なのか、一切不明だからだ。寝たきりの夫を不憫に思って薬を盛ったのか、それとも薬を盛ったから寝たきりになったのか……?全編通して妻が夫を気遣う言葉が一言も無いあたり、私は怨恨説を推す。もし愛してるなら如何に完璧な計画であったか語るよりも、他に言うことあるでしょ。

「ゾンビ」という前者の意見は……明らかにゾンビアポカリプスの見過ぎ。以上。